イジワル副社長と秘密のロマンス

「おいで、千花」


吉原さんの事務所を出て、再びタクシーに乗り込んだ。樹君が私の住んでいる場所を運転手へ告げると、ゆっくり車が動き出す。

背もたれにもたれかかり、樹君からのプレゼントが入ったトートバックを膝の上に置いた途端、今日一日の疲れが自分の中でじわり広がった気がした。




殺伐とした空気を残したままスタジオでの撮影を終えたのは、6時間も前の話である。

そのあと社長と樹君は、白濱副社長の提案でロイヤルムーンホテルへと移動することとなった。

新設されたばかりのロイヤルムーンホテルへと到着し、ブライダル施設へと向かう。その場で話し込んだ三人を、しばらくの間、私と星森さんは黙って見つめていたのだった。

それから施設内をいろいろと見て回り、また少し話し込んだ後、再び白濱副社長が提案する。ホテル内のレストランで夕食を、と。

樹君がため息を吐きつつ、私を見た。それに対し、私は笑みを返した。

一緒に食事をしようと言っていたから、樹君はそのつもりでいたのだろう。

しかし、まだ少し聞いてもらいたいことがあると言われてしまうと、また今度と突っぱねて帰るわけにもいかないだろう。当然、夕食のお誘いを受けることとなる。

私も同席させてもらうことになり、話の邪魔にならないよう静かにディナーを頂いていたけれど……なぜか途中からずっと、私が白濱副社長とお喋りすることになる。


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