イジワル副社長と秘密のロマンス

不敵な笑み


足取り重く、自分のテーブルに戻っていく。

椿が戻って来ていることを期待していたけれど、テーブルには袴田さんの姿しかなかった。

お願いだから早く戻って来てよと心の中でため息を吐きながら、私は力なく自分の席に腰をおろした。


「三枝さん」


私が座るのを待ち構えていたように、袴田さんがこちらへと少し身を乗り出し、眼鏡を指先で押し上げた。

思わず身をのけ反らせてしまう。


「大丈夫でしたか?」

「え?」


何がと質問を重ねる前に、袴田さんの視線が先ほど私が立っていた辺りへと向けられる。


「絡まれていたのでしょう?」


彼の視線を辿れば、そこにはまだ樹君と津口可菜美が向き合っていて……何か口論しているような、そんな様子だった。

たぶん、私のことで津口可菜美が怒っているのだろう。

樹君に深い意図などなかったとしても、あんな綺麗な彼女がいるのに、他の女と会う約束をしようとしていたのは事実である。

だから、もう少し申し訳なかったという態度をとってもいいと思うけれど……彼にしおらしさなど、これっぽっちもなかった。

表情を見る限り、怒りに怒りを返しているといった感じである。


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