イジワル副社長と秘密のロマンス
聞こえた言葉に目を見開いてしまう。家まで送ってもらいたい人と言うのは……もしかして私のことだろうか。
「……え?……あの……もしかして」
「家までちゃんと送るから」
「だっ、大丈夫だよ。駅前に戻れば、タクシーつかまると思うし」
「俺が大丈夫じゃないの。酒が入った千花を、ひとりふらふら歩かせたくない。危なっかしいし」
そんなに酔ってないのにと小声で呟けば、睨まれてしまった。私の“大丈夫”は却下らしい。
「それと……これ、俺が預かっても良い?」
ずっとテーブルに寝かされていた私お手製の黒ネコを、樹君が掴み上げた。
「別に構わないけど」
彼の意図が掴めなくて首を傾げると、樹君の手がそっと黒ネコを撫でた。
「壊れた部分とか、いろいろ直したい……だってこれ“俺”でしょ?」
ずばり言い当てられ、言葉を失ってしまった。
このネコは、昔、彼とのやり取りの中で生まれたネコである。
覚えていてくれたこと、言い当ててもらえたことに、涙が込み上げてくる。
「今すぐには着手できないかもしれないけど、手直しできたら返すから。楽しみにしてて」
嬉しくて、嬉しすぎて、私は樹君の腕にぎゅっとしがみついた。