宛先は天国ですか？

ため息混じりに文句を言うと、聖也が「だから悪かったって！」と両手をあわせる。

えへへと笑っているあたり、反省とかはしていないだろう。

とりあえず、「怒ってないから」と言うと、聖也は安心したように笑った。

それから、良かったと言ってわたしの隣に自然と並ぶ。


…ああ、そっか。


「それにしても、俺をおいてくなんて、佐川も酷いやつだなぁ」

大してそう思っていないくせに、聖也はそんなことを口にする。

まあでも確かに、同じ方面だからと一緒に帰っていたのに、おいていってしまったのは申し訳ない。

その点では、酷いやつだと言われても仕方ないだろう。


言い訳をすると、考え事をしていたのだ。

ただきっとそう言えば、聖也はその考え事とはなにか問うてくるだろう。

だからそれは言わないで、

「聖也、先に帰ったのかと思った」

さらっと、思ってもないことを口にした。