宛先は天国ですか?



コツンと軽く小突いてやると、聖也は「まあそうなんだけど」と困ったように笑う。

それから「帰ろうか」と歩き出して、そっとわたしに笑いかける。

「女子がさ、男子にこうした方が可愛いって言われたら実践するじゃん?

それと同じようなものだって、思っててくれればいいから」

気持ち分かるだろ?と同意を求めてくるけれど、そのへんの心理には詳しくない。

…というか、そういうことはきっと、環奈ちゃんあたりならすぐ分かってくれるだろう。

わたしは、少し疎いものだから。


まあでも、

「分からなくはないかな」

確かにわたしも、男子に、というか将太さんに、こうした方が可愛いとか言われたら、きっと翌日には実践してるだろうから。

気持ちが全く分からないわけではない。


電車に揺られてほんの数駅で聖也が降りていく。

わたしは、ほとんど人のいない車内で、スマホの電源をつけた。

真っ先に映る将太さんの連絡先。

これでまた会える保証がある。

そう思うとなんだか嬉しくて、頬が緩む。


…また、一歩前進、できたかな。

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