サヨナラの行方
常務と向き合うなり、頭を下げられた。
それにつられて、彼女も下げた。
2人は、俺が着く前に来ていたらしく、俺の席の横で立っていた。
神妙な面持ちで2人して立っているものだから、誰も声をかけられなかったみたいだ。
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました」
そもそも、俺が結婚を承諾しなければ、こんなことにはならなかったのだから。
「いえ、誰でも間違いはありますから。努力もしなかった娘も悪いですし」
そう言われた娘は、今でも不満そうな表情をしている。
だけどもう、口出しはしないみたいだ。
「では、こちらです。ご確認をお願いします」
常務が差し出したのは、待ち望んでいた離婚届だった。
彼女が書く場所も全て埋まっていた。