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滑走路を漆黒のSW-24が駆け抜けて行く。

上空には何も見えないが、五十個のポイントがデータとして入力されている。

レーダーには、ポイントが一つ表示されていて、通過するたび次のポイントが表示される様にプログラミングされる。

全て通過した時間を計測して、機体とパイロットの評価をするのだ。

当然ながら、ポイントは三次元に配置されている。

勢い良く飛び出したSW-24は、くるりと反転して、飛び出した方向と逆の方向のポイントをスルリと通過する。

菱沼の操作する、ノートパソコンを覗いてみると、SW-24の軌跡を示すブルーの帯が次々と赤いポイントを通過して行く様子が見て取れた。

「ははぁ、こりゃ前の基地でエースになる訳だ。」

菱沼は、感心した様子で画面に見入っている。

格納庫のシャッター前に木箱を据えて、そこに置いたノートパソコンにホストコンピュータから有線でデータ貰っているのだ。

「こりゃ掘り出し物だな。」

菱沼が、同意を求める。

菱沼に取って操縦士は、ただの面倒で不安定な部品の一つなのではと思う事が有る。

だが、新任の腕は確かに良い。

最近ではめったに見ないレベルだ。

画面上では最後のポイントが通過済みの×記しに変わった所だ。

「三島より若干、動きは固いけどなかなか。」

菱沼は満足げだ。

「ブランクが長いから今なら私より上だよ。」

謙遜と実感が五分の感想だ。

「白い死神もタイムアタック勝負してみるか?」

「恥ずかしい名前で呼ぶな、もう昔の話だ。ついでに、別部署の私が勝負を挑む意味も分からない。」

「まあまあ、ほら着陸するぞ」

黒い機体は、車輪から軽く煙を上げて接地するとみるみる減速していく。

「どれ、姫君をお迎えしましょうか。」

菱沼は、いそいそとパソコンを脇に寄せて格納される機体の方に歩いて行く。

牽引車に引かれ移動するSW-24が、その滑らかなラインにそって艶めかしく光を反射している。

あわただしくタラップが準備され、ポリカーボネイドの風防が、前方に向かって開くと、操縦士がゆっくりと立ち上がった。


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