aeRial lovErs
『鴎、烏(からす)の具合は?』

「問題なく付いて来ています。」

管制塔からの受信に私は、ともすれば、不機嫌になりがちの声を抑えながら答えた。

私の報告どうり、黒いSW-24が少し遅れて海の上を飛んでいる。

どうしてこんな事になったのか知らないが、朝の会議で高崎との飛行計画が告げられたのだ。

プップッと電子音がして、短距離暗号通信が開く。

『こちら烏、えっと・・・やはり、ご迷惑でしたでしょうか?』

「命令だから迷惑だとかは関係無い。飛行に集中する様に。」

『すみません』

高崎の沈んだ声が聞こえ、通信が終了する。

あと少しで指定点に着く。

通常ルートよりかなり手前で引き返す様に設定されている。

この面倒な任務は、ここからが本番だ。

「指定点通過、両機反転、空戦訓練開始します。」

同じタイミングで反転したため、高崎の後ろに私が付く形になる。

SW-24の両翼のシグナルが三回点滅してグンと加速する。

旋回性能のわるいGU-23で、高崎が操縦するSW-24の相手になるはずは無い。

しかし命令は命令だ、せいぜい粘って悪役をこなすしか無い。

八割までと指定されたスロットルをギリギリまで開ける。

迫るSWに照準を合わせ、仮想弾にセレクタを合わせた機銃のトリガを押す。

データ上に展開された弾が高崎目がけ発射される。

ヒラリと横にロールして躱した高崎は、そのまま急激に減速。

私も後ろに付かれ無い様に減速しながら高度を上げる。
時間内に高崎は逃げ切ると云う設定のため時間を浪費する訳にいかないはずだ。

機首を下げて高度を落しながら再度、高崎を狙う。

高崎は、高度を下げる勢いと共に一気に加速して、海面すれすれを飛行する。

射程から逃した私は、加速して高崎を追跡する。

あと少しで模擬戦終了線に到達する。

予定通り高崎の勝ちだろう。

そう思った時フワリと高崎の高度が上がり失速する。

私は、反射的にトリガを押す。

レーダー上で高崎の機体を示すブルーのマーカーが被弾を示す赤に変わる。

「模擬戦終了、間もなく帰還します。」

私は、何処か引っ掛かる物を抱え帰還の報告をした。
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