aeRial lovErs
「すまねえな、付き合わせちまって。」

菱沼が後部座席からひょつこり顔を出す。

私の運転する松菱社製の車は快調に国道を走っている。

ただ運転する私は、快調とは言いがたい。

「奥さんへの誕生日プレゼントなんて、素敵ですね。」

助手席ではしゃいでいるのは、高崎だ。

何故に菱沼と高崎とで出掛けているのか。

事は、一昨日、休憩所で菱沼が妻への誕生日プレゼントを何にするか迷っている所に高崎が出くわした所に始まった。

話しを聞いた高崎は早速先程の調子ではしゃぎ始め、何にするか悩んでいるなら選ぶのに付き合うと申し出たそうだ。

女性へのプレゼントなど苦手な上、毎年の事でネタ切れしていた菱沼は、二つ返事で了承した。

そこまでは良い、勝手にしてくれだ。

翌日つまり昨日の朝、菱沼の年代物の愛車が故障した。

基地に着くなり、エンジンの有るリアハッチから煙りを吐き始めたそうで、かなり本格的な修理が必要らしい。

それで私に泣き付いて来たと云う訳だ。高崎もいっしょだと云う事は告げずにだ。

別に高崎の事を毛嫌いしている訳では無いが、模擬戦の一件以来良い印象を持っていないのも事実だ。

「市内のショッピングセンターまで行くんですよね。」

「ああ、出流ちゃんと三島には、昼飯をご馳走しよう。」

カーブに差し掛かっていた私は、危うくハンドルを切り損ねそうになる。

「いずるちゃんって、菱沼失礼じゃないか?」

「失礼だなんて、全然かまいませんよ。」

やれやれだ。
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