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その命令を受けたのは光の命日から数日経ってからの事だ。

小型旅客機を囲む形での編隊。

戦闘機五機に探査機一機の長距離飛行機。

詳細は作戦直前に伝える。

また、現状の内容も機密事項にあたる・・・だそうである。

探査機役は、遠見の鴎(かもめ)、つまり私が指名された。

発着場所も旅客機の搭乗者も未だ当事者の私達にすら公開されていない。

ただ、戦闘機の配列に烏(からす)こと高崎 出流の名前も有った。

高崎の飛行技術はすでに、この基地でも五本の指に入る。

作戦内容に伏せられた箇所が多い事からも、重要な任務で有る事が想像出来る。

多分、政府の要人警護で間違いないはずだ。

「おうよ。」

格納庫脇にあるいつもの休憩所でタバコを吹かしながらボンヤリ考えていた私の思考を、いつもの声が遮る。

「鴎の調子はどうだ?」

菱沼がくわえタバコで全身のポケットを探りながら聞く。

私は、目で合図して胸ポケットからオイルライターを取出し投げてやる。

「主翼のヨレが気になるな。」

私のライターでタバコに火を付けた菱沼は、したり顔でライターを投げ返す。

「当たり前だ、安定出すのに翼が長いからな、戦闘機とは違う。」

「まあそうだが・・・そうだな、後は大丈夫だ。」

分かっているはず、だが最近特に旋回性に苛立ちを覚える。

偵察機に求められていない動きを、頭のなかでシュミレーションしてしまう。

そして現実とのギャップが操縦桿から伝わる。

「まあ、安定性は腕でカバー出来るだろうから、動きは極力調整してやるよ。」

極力な、と念を押してからポケットに手を突っ込んだまま菱沼はドカリと椅子に座る。

「ああ、まかせるよ。」

「所で、例の出撃お前も行くんだろ?」

菱沼の問に私は軽く眉をひそめる。

「何処でそれを?」
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