たったひとつの恋をください




驚きすぎて、目を逸らすことすら思いつかなかった。ただ、唖然とこっちに向かって歩いてくる彼を見ていた。


今度こそ、間違いない。


やって来た彼は、七夕のあの夜、雨の公園でほんの少しの時間を過ごした、あの「蓮」だった。



「お疲れー♪」


琴里が嬉しそうに言って、


「おう」


蓮がタオルで汗を拭いながら答える。


そして。


「紹介するね。この子、うちのクラスに転校してきた塩屋七瀬ちゃん。そしてこっちがーー」


琴里が、蓮の腕に自分の腕を絡めて言った。


「あたしの彼氏の、須藤蓮(すどう・れん)。仲良くしてね♪」




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