不器用男子に溺愛されて
episode * 01


 ────ピッ、ピッ

 最近買い換えたという新品のコピー機。そのボタンを操作しつつ、印刷物を側で纏めている私は、小畑みや子(オバタミヤコ)。

 ここ数年ずっと変えていないミルクティーブラウンのショートボブヘアがお気に入りで、体型は若干ふくよかである。太っているわけではないと思うけれど、決して痩せてはいない。周りの女の子にはマシュマロみたいだとよく言われる。

 今日もそんな自分の体型をどうにかしないとな、なんて考えながらいつもと変わらない仕事内容をこなしていると、そんな私に向かってブラウンの髪を巻いた綺麗な女の子が真っ直ぐ歩いてきた。

「ちょっと、みや子」

「どうしたの? 咲ちゃん」

 眉を逆八の字にして、怒ったような様子の彼女は、夏原咲(ナツハラエミ)ちゃん。私と同じ時期にこの会社に派遣社員としてやって来た同い年の24歳、同期である。

「加奈代さんとあんたの彼氏、またもめてるわよ」

 そう言った咲ちゃんは、視線を左の方へと流した。咲ちゃんが流した視線の方を見ると、何やら奥の方で男女二人が言い合いをしているような姿が目に入ってきた。

「ああ、本当だ……」

 私は、溜息混じりに呟いた。

 私の視線の先、オフィスの奥の方にいるのは、私たちよりも一年早く正社員として働き始めている一歳上の先輩で綺麗な黒髪を一つに束ねている坂田加奈代(サカタカナヨ)さんと、同じく私達より一歳上で、無造作に整えられたふんわりとしている黒髪がなんとも言えない程に格好いい 堀川理久(ホリカワリク)。彼は、一応私の彼氏である。

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