不器用男子に溺愛されて
episode * 03

 理久くんが、私に別れようと言った理由を知る。理久くんが、今まで私のことをどう思っていたのかを知る。それは、私にとっては何よりも怖いこと。だって、今までの半年間が、ひょっとしたら嘘になるかもしれない。

 好きじゃないのに付き合っていた、なんて仮に言われたとしたら、その言葉を聞いた瞬間に、私が理久くんと一緒にいた半年間に得た感情は、全て無かったことになるのだ。


「おーい、小畑」

「あっ。さ、佐伯さん……!私また何かやらかしましたか⁉︎」


 コピー機の前に立ち、決めたばかりの覚悟を揺るがせていた私。そんな私の後ろから声がかかり、振り返るとそこには佐伯さんがいた。

「小畑、俺が小畑のことを呼ぶ時は必ず説教の時だと思ってるだろ。残念だけど今日は違うよ」

 佐伯さんは、はははと笑いながらそう言った。そして、右手の指先を折り曲げて私に「ちょっとおいで」と言うと、オフィスを出た。

 私は、コピー機から印刷され出てきた資料を急いで手に取ると、オフィスを出た佐伯さんを追いかけた。


「どうしたんですか?」

 なにもミスをしていないのなら、呼び出された理由は何だろう。そう思い、人気のない廊下の隅で立ち止まった佐伯さんに問いかけた。

「あー、いや、ちょっと小畑に謝らなきゃならないなあ、と思ってな」

 佐伯さんは、右手で髪を乱すようにしながら決まりの悪そうな顔をした。

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