不器用男子に溺愛されて

「私は……！それでも、理久くんがいい！理久くんが私には勿体無いなんてことは絶対にないし、理久くん以外の男の人のところに行こうなんて、これっぽっちも思わなかった。私は、理久くんが好きなの。ミャーコばっかり可愛がるし、ちょっと冷たいところもあるけど……それでも隣にいたのは、理久くんが好きだからだもん。理久くんがいいからなの」

　私の言葉に、理久くんは少し驚いたような表情をした後で笑った。

「すぐ泣く」

　理久くんの指が、ミャーコから私に伸びた。親指で私の頬を伝っていたらしい涙をすくうと、理久くんは優しく笑った。

　今の言葉も、表情も、指先も、すべて、私に向けられたもの。

　その事実に、私は急に何か熱いものが一気に込み上げてきて、また涙がとめどなく流れ出した。


「堀川さ……」

「名前、別にもういいけど」

「えっ？」

「戻るんじゃないの？　元サヤに」

　少しだけ優しい表情をしている理久くんと、その理久くんの言葉に私の口角は上がった。嬉しくて、嬉しくて、堪らず笑みと涙が零れ出す。

　私は、つい理久くんに抱きつき両手を理久くんの背中に回した。我ながら大胆な事をしたなと思ったけれど、せずにはいられなかった。理久くんが恋しくて、愛しくて仕方がない。


「ねぇ、それじゃあ、理久くんも私の事好き……ってこと、だよね？」


　ぎゅっと理久くんを抱きしめる。

　すると。理久くんは一度私から距離を取った。そして。


「そうじゃなかったら、元サヤになんて戻らないと思うけど」


　と言って、私の唇に唇を重ねた───。