不器用男子に溺愛されて

 理久くんと元サヤに戻れたせいか、いつもよりずっと軽いフットワークで動けていた私。仕事に没頭し、いつも以上の働きぶりを発揮していると、気がつけばお昼休みになっていた。

「みや子、お昼行こっか」

「あ、うん!その前に、ちょっとだけ森田さんの所に行ってもいい?」

「あ、うん。いいよ」

 私は、咲ちゃんとお弁当の入ったバッグを片手に森田さんのもとへと向かった。森田さんがいつも理久くんと社員食堂を利用していることを知っていた私と咲ちゃんは、二人がいるであろう社員食堂に入ると案の定向かい合わせに座り社食を食べていた二人の元へと近づいた。

「あ、咲ちゃんと噂の小畑ちゃんだ」

 二人が座っている席へと近づくと、私と咲ちゃんの姿を見つけた森田さんがこちらを見て言った。すると、その森田さんの視線を辿るようにして、私たちに背を向けて座っていた理久くんが振り返った。

「二人とも、いつも休憩室で食べてるのに今日はどうしたの?」

 森田さんがそう言って、目の前にあるカレーライスを頬張った。私は、少しだけ森田さんの方へ近づき、口を開いた。

「えっと……あの、昨日のことなんですけど……」

「あ、今さっき聞いたよ。仲直りできたんだってね」

 やったじゃん、と言って笑う森田さん。森田さんは私に向けて笑った後、一人黙々と森田さんと同じカレーライスを頬張っている理久くんにニヤニヤとした笑いを向けた。

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