クールな公爵様のゆゆしき恋情
今後の事を真剣に考えた結果、俺がフェルザーの当主になるのが最良だと結論を出した。

考えれば考える程、良い発想と思える。

兄上にとっては王位継承の邪魔になる存在を排除出来るし、当主の不在で不安定なフェルザー領の民の不安も消える。

ラウラにとっても、結婚後王都ではなく、生まれ育ったアンテスの近くで暮らす事が出来る事は嬉しいだろう。辺境伯が言うには、ラウラは王都での暮らしが嫌いらしいからな。

我ながら素晴らしい発想に笑いが溢れそうになる。

「お前は……自ら王位継承権を捨てると言うのか?」

ベルハイムでは、王子は臣籍に降りた時点で、王位継承権を失う。

俺の王位継承権は現在第二位と高位だから、普通なら自ら臣籍に降りたりはしない。

だが俺にとっては王位継承権を失うより、ラウラを失う方が大問題だ。

「……お前の言う通りフェルザー領の当主不在には私も頭を悩ませていた。お前が受けてくれるのなら助かるが……」

よし!上手く行きそうだ。
思わず顔がにやけそうになるのを必死に堪え、神妙な顔をする。

「誠心誠意、フェルザー領の為に尽くします」

だから、今すぐフェルザー領へ行かせてくれ。

あそこはアンテス領の隣だから、公務の合間にラウラの元を訪ねる事が出来る。頻繁に粘り強く通ってラウラを説得するんだ。

心はもう王都を飛び立っていた俺だが、国王の言葉で現実に戻された。

「お前の望みは良く分かった。私も賛成だが、今直ぐに公爵の地位を与える事は出来ない」

「はっ? なんでだよ!」

「まずはフェルザー公爵に相応しいと貴族達を納得させなければならない,時間はゆっくり使って構わないから、皆を納得させる良い領主の姿をみせなさい」

「……ゆっくり?」

「ああ、一年、二年かければお前なら必ず出来る。焦らずに……」

「二年⁈」

そんなに待てるか!
俺に残された時間は、後一年もないんだからな!
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