クールな公爵様のゆゆしき恋情
「大好きな人? 誰なの?」

「おばあ様ですよ。お父様のお母様で先の辺境伯夫人です。3年前に亡くなったのですが、その少し前に頂いた今となっては形見の品なのです。おばあ様は贅沢を好みませんでしたので高価なものではないのですが、私はこのネックレスをとても気に入っています」

辺境伯夫人として強く、母として優しいおばあ様を皆はとても尊敬して慕っていました。勿論私もです。いつも凛としていて、でも笑顔が可愛らしくて優しいおばあ様の事を私はとても好きでした。

「そう。ではそれはとても大切なものね」

エステルの言葉に私は微笑んで頷きました。




夜も更けたのに、広間は橙の灯りに照らされ明るく、賑わっています。

お城の皆さんが、気さくに「おかえりなさい」と声をかけて来てくれます。

みんな笑顔でいっぱいです。

隣には大好きな親友のエステル。その隣にはエステルを愛し気に見つめるお兄様。
エステルにべったりなお兄様を少し呆れた様子で眺めるお母様。
まだ子供なので宴には出られないグレーテは部屋で少し不貞腐れて寝ているのでしょう。明日ご機嫌を取らなくては。

騎士の皆さんの中心で穏やかに語らうリュシオンは、時々私に目を向けて笑いかけてくれます。
ここには私の大切な人が沢山います。


アンテスに戻って来て良かった。


今、私は心からそう思いました。

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