クールな公爵様のゆゆしき恋情


無心になって花の手入れをしていると、頭上から声がかりました。

「ラウラ姫、こちらでしたか」

顔を上げなくても、聞き慣れた声で分かります。

「リュシオン、ちょっと待ってください」

私は途中だった苗の植え込みを続けながら言い、作業が終わると額に流れる汗を拭いてから顔を上げました。

「どうしましたか? 今日は来る日じゃなかったと思いますけど……」

リュシオンは三日に一度位、私の様子を見に来てくれます。

何か困っている事がないか伺いに来てくれる事と、この屋敷の周辺の警備をしてくれている騎士達の監督をする為です。

この辺りはアンテスのお城からも近いし、隣国との国境からお城を挟んで反対方向ですから、それ程危険は有りません。

ですがお父様は、おばあ様がいらっしゃった時から、周囲の警戒にと騎士を見回りに寄越してくれています。
その責任者がリュシオンなのです。

でも、リュシオンは昨日、来たばかりです。
と言う事は今日の訪問は特別な用が有るのではないでしょうか。

私は立ち上がり、リュシオンを中庭に配置したしたテーブルセットへ案内しました。
手入れをした花々が良く見えるし、風通しも良いとても気持ちが良い場所です。
最近、遊びに来たお母様の命令で日よけの大きな傘も設置してあります。

ここでお茶をするのは、私の毎日の楽しみです。


私達がテーブルに着くと、侍女のアンネがお茶を運んで来てくれました。

薔薇の香りのするそのお茶はよく冷えていて、とても美味しく感じます。

一息つくと、私はリュシオンに言いました。

「それで、何が有ったのですか?」

「はい。本日はレオンハルト様の命令で参りました。ラウラ姫にお伝えする事が有ります」

リュシオンはお茶には手を付けずに姿勢を正して言います。

きっとお兄様の命令を済ますまで寛ぐ気は無いのでしょう。

「分かりました、聞くので話して下さい」

私もしっかりと聞いていると伝える為に居住まいを正します。
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