クールな公爵様のゆゆしき恋情
冷たくされ、意地悪ばかりされましたけれど、アレクセイ様がとても好きでした。

婚約した10年以上前からその気持ちはずっと変わらなくて、だから辛い仕打ちにも耐えられたのだと思います。

苦しくても側に居たかった。

でも、それは私らしさを少しずつ失わせていきました。

言葉を飲み込み心を殺して。アレクセイ様の側に居たくて苦手な王都に留まって……でもそれは、はたして生きていると言えるのでしょうか?

私らしさを失ったこのままで本当に幸せと言えるのでしょうか? 


アレクセイ様と別れるのはとても辛いです。
でもこの先いくら待ってもアレクセイ様の気持ちが私に向く事は無く、いつまでもこの苦しみは続くのです。

そんなのは嫌だと思いました。

私は私らしく生きて行きたい。その為にはアレクセイ様への執着を捨てるしかないのです。

失恋の痛みはきっと乗り越えられるはず。その事に気付くまでに長い時間がかかってしまいましたが。


私がその気付きを得た時、運命的なタイミングで王家とアンテス家との事情が変わりました。
私とアレクセイ様は結婚する必要が無くなった。

あとは私が言うだけです。
アレクセイ様との婚約を解消したいと。


私は眠れない夜を何日も過ごし、ようやくがんじがらめだった想いを自分の力で断ち切りました。

夜会の前にお父様と共に国王陛下に目通りをし、婚約解消の許可を頂いたのです。


決心の上の行動だったけれど、苦しいです。
思い出が浮かんで来ると悲しくなります。


でも、今私は解放感でいっぱいです。

私の心はようやく自由になれるのです。

それは涙が出るほどとても爽快な事でした。

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