溺愛〜ラビリンス〜

鷹宮 淳稀 side


あの日から柚ちゃんは学校に来なくなった。僕のせいなのは分かっている。それでも毎日登校すると柚ちゃんの姿を探してしまう。


教室の入口まで来ていつものように中を見ると、毎日探し求めていた姿がそこにあった。
彼女は僕を視界に入れると表情を強張らせて直ぐ視線を反らした。

女の子の騒々しい声すら耳に入らない。僕の方を見ようとしない柚ちゃんに、声をかける事も近づく事もできなかった。教室に入ると緊張した雰囲気が広がり、柚ちゃんを警護しているんだろうブラックホークスの奴等が、少し離れた所で臨戦体制をとっている。


僕は柚ちゃんを一瞬だけ見てすぐ自分の席に着いた。
柚ちゃんは僕が近づかなかった事にホッとした様だった。


「柚ちゃん大丈夫?」


心配そうに有希ちゃんが聞いていた。


「大丈夫だよ。ありがとう。」


柚ちゃんの震える声が聞こえてきた。

チャイムが鳴り亜莉沙ちゃんが声をかける。


「先生が来るから席着こ?」


亜莉沙ちゃんの言葉に二人は頷き、それぞれ席に向かった。


もう前のように声をかける事もできない…唇を噛み締め自分のした事を懺悔した。




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