溺愛〜ラビリンス〜

島谷 龍也 side


ブラックホークスが動き出した。大輝からの連絡でその事を知った。
悠斗が柚ちゃんと今晩過ごすと言い出した時から予測はしていた。アイツ等にとって柚ちゃんはチームそのものと言って良い存在の姫だ。その姫をたった一晩とは言え奪うように隠すのは許されざる事だ。

アイツ等は血眼で悠斗と一緒にいる柚ちゃんを探しているはずだ。


水族館から見晴らしの丘に行き、戻って来た二人の様子を見た時、悠斗の長い恋は実らなかった事を悟った。胸が痛かった。ずっと傍にいて悠斗がどんなに柚ちゃんを大事にしていたか、柚ちゃんへの想いに喜んだり、苦しんだりしてきたか…俺は全部見てきたから、悠斗がどんな気持ちなのかを思うと苦しくて胸が痛くて仕方なかった。

だから悠斗と柚ちゃんが一晩一緒にいるって決めた事が、悠斗にとって唯一の救いのような気がして、何が何でもそれだけは全うさせてやりたいと思った。そうでなきゃ悠斗が可哀想すぎる。
絶対にアイツ等に邪魔はさせない。そう思っていた。アイツ等が俺の前に現れ、痛い所を突くような事を言うまでは…いや、アイツ等のキングや姫の思いに打たれたのもある。それ以上に言われた事は正論だったから何も言い返せなかった。





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