ツンデレ社長の甘い求愛
バンッと机を叩く音に思わず肩がすくんでしまった。

「こんな企画を通せるわけねぇだろうが! そもそもなんだ、これは! 購買層に合わせたコンセプトにはかけ離れているだろう! こんなの却下だ、出直してこい!!」

「すっ、すみませんでした!!」


きっちり九十度に頭を下げ逃げるように席に戻る仙田くんに、憐みの眼差しが向けられる。


ここは『株式会社フラワーズ』。

社名を口にすれば誰もが知っている大手菓子メーカーだ。

菓子の製造を主に、近年では飲食店やホテル経営事業まで展開している。


そんな我が社の代表取締役社長がたった今、会議室内を凍てつかせた人物、今井 大喜(いまい だいき)三十歳。


不慮の事故により二年前、社長の父親である前社長が亡くなり、今は彼が社長の職に就いている。

今井社長が社長に就任したのは、二年前……つまりまだ二十八歳のときだった。


不慮の事故とはいえ、これまで我が社に一切関わってこなかった今井社長の就任に、反対する声は特に幹部から多かったらしい。
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