ツンデレ社長の甘い求愛
「ここはお前が使え。俺は他のホテルを探すから」

「――え、ちょっと待ってください! さっき言いましたよね? どこも満室だと」

出て行こうとする社長の腕を掴み食い止めた。


「もしかしたらキャンセルが出たホテルもあるかもしれないだろ?」

「例えそうだとしても、外は大嵐ですよ!?」

「だからといってお前と一晩、同じ部屋で過ごすわけにはいかないだろう!?」


声を張り、腕を振り切られてしまった。

そして社長の足は迷わずドアの方へと向かっていく。


社長の言うことは最もだ。

いくら非常事態とはいえ、同じ部屋で一晩共にするなんて問題ありすぎる。でも――。


「社長が出て行く必要ありません! ここは私が出ます!!」


慌てて追いかけ、先回りしドアを塞いだ。

途端に社長は顔をしかめる。

「バカかお前は。部下を大嵐の中に放り出す上司がどこにいる」

「部下が上司に譲るのが一般ではないでしょうか!」


負けじと言い返すと、社長は唇を噛みしめた後、額に手を当て深い溜息を漏らした。

「馬場、悪いがここは引き下がれ。どう考えても俺が別の宿を探すのがいいに決まっている」


今度は諭すように言われるけれど、ちょっと言い方を変えたくらいでは私の気持ちは変わらない。
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