ツンデレ社長の甘い求愛
最上階には私が借りている部屋を合わせて五部屋しかない。


下の階の住人は定住している世帯がほとんどだけど、最上階だけは裕福な人たちがペットと週末を過ごすためだけに借りていたり、長期出張の際にペット同伴で暮らすといったケースばかり。


一ヵ月で出ていってしまう人も少なくなかった。

マンションだしご近所との付き合いなんて皆無だけど、毎回誰かが引っ越してくるって聞くと、ちょっとわくわくしてしまうのも本音。

短い期間でも隣で暮らす人なのだから。


「なにもないと思うけど、一応ここの部屋は私の名義になっているし、なにか尋ねてこられたら連絡してね」

「うん、分かったよ。気をつけてね」

「また今度ゆっくり一緒に出掛けましょう」


パタンと閉められた玄関ドア。

カイくんとふたりっきりのいつもの日常に戻っただけだというのに、毎回由美ちゃんが帰った後は寂しさを感じてしまう。

「さて、と! 明日はカイくんとゆっくり公園で遊んだりしたいし、今日は早めに寝ようね」

「ワン、ワン!」


気を取り直してしゃがみ込みカイくんに話しかけると、まるで『そうだね』と言うように吠えるカイくんに和まされた。

明日は少し遠くの公園まで行ってみようかな。


明日のことを考えながら、この日は早めにベッドに潜り込んだ。
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