虎と獅子。
プロローグ
さくらの花びらが、ゆるゆると弧を描いて降ってくる。

私はのんびりといつもの通学路を歩いていた。

今日も相変わらずいい天気。

「あ、くる」

ぎゅるる〜と腹の虫が豪快に鳴った。

朝ごはんはきちんと食べたつもりなんだけど、やっぱりわたしの満腹中枢はいかれているらしい。

うーん、今日はお菓子入れてきたっけ。

そう思ってゴソゴソとスクールバッグを探り、中から小さな箱を取り出した。

「とりあえず始業式はこれで乗り切ろう」

『ジンギスカンキャラメル』と書かれたなんともユニークなパッケージのそれは、独特な風味が特徴的でくせになる味がする。

以前友達に進めたら、全力拒否されたんだけど。

こんなに美味しいのに。

コロコロと口の中でキャラメルを転がしていると、目の前に見慣れない人の姿が現れた。

同じ学校の制服を着ているから、おそらく転入生だろうか。

スラリと背筋の伸びたその後ろ姿は、どこかで見たことあるような気がした。

真っ白で、細くて、綺麗な……。

「百虎……!?」

住宅街の中にも関わらず、私は思わずそう叫んだ。

すると彼はくるりとこちらに振り返り、

「やっほー、獅子。久しぶりだね」

不敵な笑みを浮かべて手を降るのだった。









まさか

こいつがここに戻って来るなんて。



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