千年の眠りから覚めれば

うごきだす刻





毎日の習慣で聞き慣れた

どこか調子の狂うようなラジオ体操の音が、

外から指す朝日とともに襖の間から流れ込んできた。



夜の帳はとっくに上がったはずなのに

未だ布団の中でうずくまり小さな寝息をたてるのは

この部屋の主である 東条院 那雪─トウジョウイン ナユキ─だ。



薄地の布団は華奢な体つきに沿って流れ落ち、

女らしい柔らかさは感じられないながらも、

少年的にほねばっているわけでもない、

綺麗としかいいようのない肢体にモデルも真っ青の美貌。


丸めがちな茶色の大きな目とそれを縁取る長いまつ毛。

肌荒れの一切ないキメ細やかな真っ白な肌に、

小ぶりな頭とそれぞれ美しくあるべき場所に収まったパーツ。


天パはさらさらのふわふわで背中の中くらいまであり、

柔らかく布団の上をこぼれ落ちる。


人を惹き付ける恵まれた容姿ながらも

それに残念さをつけたすように、生活は不規則だ。


習慣である毎日の朝練習で

ラジオ体操はその最後にやる。


どうも朝に弱い那雪は、大抵いつもラジオ体操は

確実に参加できる時刻に起きるのだが、

今日は遅刻決定だった。

< 3 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop