お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

それぞれの旅立ち

私はシングルのまま30歳の誕生日を迎えた。友達からおめでとうメールが沢山入る。

あれから出会いの場所に、積極的に顔を出した。職場で介護職員で私より2つ年下の女の子とすごく仲がよかった私。

彼女はシングルマザーで、夜勤もこなし太陽のように明るい子だった。

「30ってやっぱり微妙な年齢だよね。こっちが結婚願望とかなくても、うかつに手をだして結婚迫られたらどうしようってなるのかな?」

その親友の心咲(みさに)に、愚痴ではないけれどこぼしてしまった。

「確かにそういうとこはあるかもしれないね。年齢を聞くと真剣交際を視野に大体はいれるんじゃない?ごめんね、今度はもっとまともな人呼んでくるからね、飲み会」

「いつもありがとう。でももういいよ。結婚は諦めて仕事に生きるわ」

心咲はいつも私の事を気に掛けてくれて、前からもあったように私が彼氏と別れたと言うと、次にいこう!次!とばかりに、豊富な交遊関係から合コンを開いたり、バーベキューを開いたりしてくれる。

女は男ができると、大なり小なり友情より愛情を取ったりしがちだ。

私は先生とあまり会えない事から、先生を優先させていた。

その理由も話せないま、まわりからすると急に付き合いが悪くなったとそう思われるだろう。

彼女にも言えない恋だったのに、「女って友達より彼氏になりがちだけど、それでいいって思ってるよ。恋してるんだもん、まわりが見えなくなるときだってあるもんね。私もよくわかるから」

彼女もまた恋に破れて、シングルマザーの道を選んだ。母になれば彼女のように強くなれるのだろうか?
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