お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

人生のメリーゴーランド~想い出のジル・スチュワート~

私は懐かしい夢を見ていた。その夢は断片的だった。夢であるので実際起こったこと、起こってはいないこと、それが混ざりあって支離滅裂だった。

けれど、もう傍にはいない先生が夢に出てきて、目覚めた私は涙を流していた。

空港の場面が夢に出て来て、東京に日帰りで出張する先生に一度だけ着いていった事を思い出した。ほとんど一緒に過ごす事は出来なかったけれど、少しでも傍にいたかった。

伊丹空港で待ち合わせた。私が先に着いた。1階からエスカレーターで上がってきた先生がすぐ目についた。

華のある先生の存在感というか、自信に満ち溢れているからだろうか。とてもオーラがあった。

貧乳地味子な私が、そんな先生の傍にいれること自体、夢のようだった。

新幹線などでも、帽子を目深にかぶっていたり、大きめのマスクなどをしていると、「あの人、芸能人じゃない?モデルさん?」そう言われて、芸能人と間違われる事が何度かあった。

本人は至って気にしている感じでもなく、「芸能人になれるならなりたいよ」
と笑って一蹴した。

「僕はそんなまわりの視線より、君の視線を独り占め出来たらそれでいいんだ」そんなセリフをさらっと言うものだから、私は恥ずかしくて、でも嬉しくてどうしていいかわからなかった。そんな一言一言に、ドキドキが止まらなかった。

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