お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

キスゲーム

それはまさにキスゲームと言ってもいいほどだった。

先生をその気にさせて、キスしてもらう。こんなにキスを意識した事なんてあっただろうか。思い出せないほど遠い昔にあった。

それは、中学2年の時のファーストキス以来だったかもしれない。30歳を目前にして、たかだかキスで、こんなにも考えを張り巡らすとは思いもよらなかった。

キス1つもらうにもこんなに大変だなんて、結婚を意識する年ごろなのに、これでいいのかな、という考えが頭をよぎった。でも、今しか出来ない恋がしたい。

それほど先生に惹かれていた。

苦戦する一方で、久しぶりの恋の駆け引きが新鮮で楽しんでいた自分もいた。

デートをするために、ずっと前から先生と休みを調整していた。私も事務職とはいえ、病院勤務で基本月8回のシフト制で、不定休だった。ただ、日曜日が休みの確率が高かった。日曜日も月に交代で1回ないしは2回出ないといけないので、それ以外は休みということになる。

しかし日曜日となると、先生の方が摂待ゴルフなんかの予定が入ったりするのだ。それに子供はいないとはいえ、先生は既婚者だ。平日は仕事で忙しくて、帰りが遅かったりする日が大半なので、奥さんと日曜日は、ゆっくり過ごすかもしれない。

私はこの時、知らなかった。先生と奥さんが別居寸前までになっていた事を。
< 26 / 184 >

この作品をシェア

pagetop