お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

逆転のチェックメイト(王手)貴方の吐息に届く前に・・・。

私は余裕たっぷりにまるで女王様気取りで、先生のネクタイの先をつかむ。

「えっ」確かにそう口にした次の瞬間、つかんだネクタイを引き寄せて、先生の顔を引き寄せて、息がかかる位近い距離で止める。

ネクタイを小道具に使ったわけだ。ただし、ノーネクタイだともちろん使えない技だ。

駆け引きで勝つ大切な要因。手持ちのカードが大した事がなくても、顔色には出さない。毅然とした態度で望み、余裕を見せることが大切だ。

心理戦は、いかに相手を揺さぶることが出来るか、だ。

先生はなるほどね、と言って苦笑いした。
「シートが倒れないから倒してっていうのはベタ過ぎるけど、ネクタイで僕を引き寄せてってのはアリかな。うん、ありだな。どこかネクタイを使ってって、色々と妄想出来るしさ」

「色々と妄想って?」
「例えばネクタイで縛ってってあるじゃない。そういうさ・・・」
「そこまで飛躍しちゃう?キスの先まで妄想しちゃう?」私はおかしくて笑ってしまった。先生も笑った。

「油断しちゃったな」先生は敗北宣言とも取れそうな発言をした。

「敗北宣言した?そしたらキスをくれるの?」

「敗北宣言するよ。でも」
「でも?」

先生は負け惜しみ?
「僕からあげるキスで、君を骨抜きにして敗北宣言させてやるから」

「何?大人のキスをくれるの?」今までの余裕はどこふく風だか、胸の高鳴りが抑えきれない。

「本気でキスしたくなったよ。今度は意地悪して焦らしたりしないからね」先生の顔が近づく。

先生の吐息が届く前に、唇が触れるその前に、私に届いたキスは・・・。



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