お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

「お口でとろける私の体温を感じてね」

夜も更けて、秘密のタワーマンションの部屋に灯りがともる。ムードある間接照明だ。

「何か考え付いた?」先生は冷凍庫から氷を取り出して、ウィスキーのグラスに入れる。カランと氷の音が鳴り、改めてここは静かな場所なのだとわかる。

「うん。まあ自信ないけどね」こう言い、私はこうつけ加える。
「先生は甘い飲み物大丈夫だっけ。ジュースとか」

「嫌いじゃないけど、あえて自分で買っては飲まないかな。あ、詠美ちゃんはウィスキーはいらないかな?」
「私はこっちがいい」と、ソファーの小さなサイドテーブルに置いてあるライチを手に取り、皮を剥いて口に頬張る。

「僕にもちょうだい」口を開けたので、新しいライチを剥こうとすると、
「違うよ。口移しで今君の食べてるやつが欲しいんだ」
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