お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
しばらくして、先生のいるソファーに戻ってきた私。

私が手にしてるグレープフルーツジュースの入ったグラスを見た先生は、「グラスに注ぐだけにしては時間かかってたけどさ、中に変な媚薬とか入れてきたの?」

「まさか。でも私の温もりをこれで感じてくれたら嬉しいな。」

「最初はね、氷とかって思ったんだけど、映画のナインハーフみたいだし、やめたの」
「ああ、あの映画を真似るの流行ったらしいね。ミッキー・ロークと、キム・ベーシンガーの9週間半の情事を描いた映画だよね。氷で首とか体の敏感な場所を撫でるやつでしょ?」

「そう。それって体に触れるわけだし、自分で考えたやつにしようと思ってね。」

そう言い、照れはあったけど私は先生の前に立つ。

「お手並み拝見と行こうかな?君を抱けるといいけど。ジュースを口移し?さっきのライチを口移しするときみたいに、唇が触れちゃだめなんだよ」

「わかってるって。ね、そこに仰向けに寝転がって」

これでいい?私の顔を見上げるようにして先生は寝転がる。

「お口を開けて待っててね、先生」わかったと言い、先生は口を開く。

次の瞬間私は手にしていたグラスのジュースを口に含んだ。




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