箱庭センチメンタル
「どうやら私の本心は、別にあったようです。
今更気付くとは思いもしませんでしたが」
「…っお姉様…!」
皐の顔が綻びる。
二転三転、くるくると表情が変わる様を眺めて呟く。
「ここから、出てみたいものですね」
少しばかりの暇が欲しい。
そんな小さな願いを、聞き入れてくれる声が近くにある。
「出ればいい」
例えばそれが、限りある夢幻の時だとしても。
ある日突然、儚く消えてしまうものだとしても。
かりそめだと分かっていながらも。
私はそれでも、きっと満足だ。
だって…——
「ここにいたくないなら、俺がお前を連れ出すよ」
願いを、彼は叶えてくれようとする。
何も知らない、私のために。