S系御曹司と政略結婚!?
顔色ひとつ変えないヤツの態度を前にして、混乱していた頭も段々と苛立ち始める。
テーブルを両手で叩いて立ち上がった私に、目の前のムカつくオヤジ2人は目を見開いた。
「いい加減にして貰えません!?勝手に大事なことを決めないでよ!
私はこんな婚約認めないし、結婚相手だって自分でちゃんと決めますっ!
しかも、相手がこんなヤツなんて、絶対にいやっ!——貴方もそう思ってるでしょ?」
ミルフィーユのように積み上げられてきたストレスがこの瞬間、火山噴火のごとく一気に噴出した。
挙句の果てにこんな結末ってないよね?——この世で最も嫌いなヤツと、一生の契りを交わすなんてぜったいにイヤ……!
捲くし立てるように言い切る娘に対し、オヤジ2人組は初めての造反によってポカンと口を開けていた。
傍らでひとり、ヤツだけは必死で笑いを堪えているみたいですけど?
人を小馬鹿にしたような顔を見て、一度開いた口は止まらない。さらにヒートアップしていくばかりだ。
「ちょっと、いい加減に本性見せたらどうなのよ!?」
その鉄骨ばりばりの仮面をつけながら微笑むな!ああ余計にムカつく!
「か、華澄っ!なんてことを」
「煩いっ!黙っててよ!」
「……え?」
制そうとしたお父様は、娘のあまりの豹変振りに言葉を失ったらしい。
おじい様なんてまるで魂が抜けたように口を開いたまま。もはや人形と化していた。ふたりのことはどうでもいい、と視線を移したのはもちろん隣だ。
対峙する二重人格なヤツの本性を暴いてやる、と息巻いて。