S系御曹司と政略結婚!?


カーテンの隙間から漏れてくる薄日の眩しさで瞼を開く。

寝ぼけ眼の私は目を擦りながら起き上がった。

するりとシーツが肌から滑り落ち、慌てて胸の辺りまでシーツを引っ張り上げた。

昨夜はあのあとでシャワーをさっと浴びると、一緒にこのベッドですぐに眠ってしまったのだ。

おかげで翌朝、顔を合わせることまで気にする余裕はなかったけど。それも杞憂に終わっていたのね。

無音のこの空間にはひとりきりなんだから……。

まるで初めから誰もいなかったように、ベッドもあまり乱れていない。


私だけが夢見心地だったのかもしれない。ただの気まぐれだったの?私の厚かましさに仕返ししたの?

やっぱり光希と同じで、性欲処理と財産が欲しいだけなの?

ヤツのことが好きって分かったけど、この気持ちは意味を失くしたね。……また裏切られるのなら気づきたくなかったよ。

満たされたはずの想いが虚しく消化されていく。置き去りにするなら、直接嫌いだと言われたほうがいい。

今日は仕事がお休みだからとベッドを下りずにいた。家の中からは生活音がしなくて、ヤツが居ないのは明らかだ。


初めてでもないし、恋愛に幻想なんか抱いていない。

それでも“ヤツとは初めて”だから、目覚めた時には隣にいて欲しかった。どこまで“S”なの……?

頬を伝って零れ落ちる涙を止められず、シーツに包まってひとり泣きじゃくっていた。


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