S系御曹司と政略結婚!?


暫くして、有川総合病院に到着。車外に出ると視線の先に見慣れた車を発見した。

目的の車の運転席の窓を叩くと、乗っていた男は驚いた顔で慌てて扉を開けた。

「オイ西川!さっさと案内しろ!」

西川がビクビクしながら車を降りると、俺たちは足早に病院の中へ入っていった。

「副社長は目覚めていませんが、命に別状はないそうです。
午後、社長室のフロアで倒れられたのを私がお運びいたしました」

“命に別状はない”この言葉でどれだけ安堵したか分からない。

そこで少し冷静になった俺は、倒れた場所が社長室のあるフロアだった違和感に気づく。

「こちらに副社長がお見えです。では、私はこれで失礼いたします」

「ああ、助かった」

目的の場所に着いたところで、西川は深々とお辞儀をしてその場をあとにしていった。

俺は一呼吸置いてから特別室のドアを何度かノックする。

返事がなかったのでゆっくりとドアを開けると、大きなベッドで点滴に繋がれ青白い顔で眠る華澄の姿を捉えた。

すぐにベッドの縁に駆け寄った俺は、その頼りない姿を前にして胸がギュッと苦しくなる。


華澄……俺はオマエに無理をさせすぎたのか?どうしてこんなことに……。


< 88 / 123 >

この作品をシェア

pagetop