秘密の花園×名なしの森

 どのくらいその状態が続いたんだろう。

「……しつき、みなと……です」

 蚊の鳴くような声ってこういうことをいうんだろうな。そのくらい、聞こえるか聞こえないか……小さな小さな声で、答えてくれた。

「しつきみなと、さん……」

 自分に言い聞かせるように、彼の呟いた名前を繰り返す。

 なぜか、聞き覚えのある名前。

「まさか、“あの”後月湊さん?!」

 思わず声が大きくなる。

 彼はびくりと体を震わせて、たぶん、と頷いた。




――20070706 / つづく
< 23 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop