あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ


課長は、腕時計をちらっと見る。
「残念ながら、もうこんな時間だ。そろそろ出ようか?」

「はい。二次会どうしますか?」
もう帰らなければならないなんて、時間が経つのが早すぎる。

もう少し、こうしていたい。

「いや。もう11時もだいぶ過ぎてるぞ。ラストオーダーを聞きに来なかったから、うっかりしてた。二次会より、帰ること心配しなきゃ」

「帰り?」

そうだった。田舎の実家と違って電話すれば誰かが迎えに来てくれるわけじゃない。
電車で帰ること忘れてた。



駅に向かって歩いている間に、時間を調べる。

「えっと、終電、何時だっけ」

「山手線のどこで下りるの?何線?」
課長が急ぎ足で駅に向かう。


課長に置いて行かれまいと、必死で歩くのと、目の前のことをどう処理していいのか分からなくなって、頭がパンクしそうだ。

「えっと、無理っぽいです。渋谷駅に着く前に12時回っちゃいます」

「どうするの?」

「何とかします。ネットカフェって東京初体験だし。深夜映画でもいいな」

課長は、少し考えてから時計を見た。



そして、とんでもないことを言う。

「それなら、うちに来なさい。寝るだけならうちでもいいだろう?」

「ええっ?課長の家」

「ここからなら、幸いにも歩いて行ける」

お、お、お持ちかえりってやつですか?
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