夜の甘やかな野望


なんでわざわざそんな大変なことを?


失礼にも思わず聞くと、やってみたくて、と気恥ずかしそうに答えた。


それで思い出した。


バッハのコンサートの夜、宗忠が語ったことを。


この人はこちらが思っているよりも、ずっと医者の使命を真摯に考えているのかもしれない。


だけど、あの内藤宗忠という男の真意はいつでも見えづらい。


倫子は憂鬱なため息をついた。


本心では別のことを考えていそう。


いつだって外面はいいが、たまに悪魔のしっぽが垣間見えて、本心がわかる時がある。


だから余計に、しっぱが見えないとき、本当は何を考えているんだろうって、不安。


本当は、どう思っているのかって。
< 203 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop