夜の甘やかな野望


その日は、なるべく記憶を掘り起こさないようにしながらも、体の違和感を感じる度に赤面して過ごした。


実際、あんなに気持ちのいい思いをしたのは初めてだ。


体が忘れたく無いらしい。


でも思い出さない。


葛藤を続け、月曜日になって出勤した倫子は、気まずい、すっごく気まずい・・・けど平静、平静と暗示をかけるよ
うに胸の中で呟いていた。


宗忠は出勤してくると、いつも通り事務室に軽く挨拶をして医務室に入っていった。


倫子もいつも通りに、面談予約順の健康診断票の束を持って部屋に向かう。


「おはようございます。
 これ、今日の面談者の健康診断票です」

「ん。
 ありがとう」


宗忠は鞄を引き出しの中にしまい、デスクに置かれた書類をちらりと見た。
< 68 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop