傷痕~想い出に変わるまで~
あっさりと離婚の申し出を受け入れた私に、光は激しく失望していたそうだ。

そして自ら私との関係を壊してしまったことを激しく後悔して、藤乃とも距離を置くようになったらしい。


“結局、私はどんなに頑張っても光に愛してもらえなかった。きっと瑞希の代わりにそばにいてくれる人なら誰でも良かったんだ。でもホントはそんなことしてる自分が許せなくて苦しくて、瑞希に抱きしめてもらいたかったんだと思う”


今となってはもうどうすることもできない過去の話だ。

光がどれだけ私を求めて自分自身の心を傷付けていたのか、改めて知ったような気がした。


喫茶店を出て別れようとした時、藤乃が“ごめんね、瑞希”と呟いた。

藤乃も光を想って私に嫉妬したり、どんなに愛しても愛されないことに悩んだりしたのかも知れない。

誰もが愛する人に愛してもらえたら幸せになれるのに。

人を想う気持ちはまっすぐだったり歪んでいたり、曲がっていたりこじれていたり、本当に複雑だ。

何が正しくて何が間違いなのか。

どの道を選べば幸せな未来を歩けるのか?

その答はどこを探せば見つかるんだろう?

変わらない気持ちとか確かな愛情とか、揺るぎない絆とか。

“絶対”と呼べるものなんてない。

大切な人が変わらずそばにいてくれる今日は幸せだと思う。

一緒に過ごせることが当たり前になりすぎて私たちが見失ってしまったものは、きっととても大切なものだったんだろう。

光とはもうそれを一緒に見つけ出すことはできないけれど、次に人生を共にする誰かとは、同じ過ちをくりかえさないようにしようと思う。

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