傷痕~想い出に変わるまで~
7時過ぎに仕事を終えて門倉にメールを送ると、終わるまでもう少し時間がかかりそうだからいつもの居酒屋に先に行っててくれと返信があった。

先に行ってろなんて珍しい。

お腹も空いているし、先に行って何か軽くつまみながらビールでも飲んで待つことにした。


いつもの居酒屋で席に案内され、生ビールとスモークサーモンのサラダと鶏の唐揚げを注文した。

タバコに火をつけて間もなくビールが運ばれて来て、お通しの枝豆を食べながらビールを飲んだ。

一人で居酒屋に来ることなんて滅多にないけど、これはこれで悪くないな。

昔は居酒屋どころかファーストフード店でさえ一人では入れなかった。

いつも誰かと一緒で、どうでもいいことを長々と話し込んでいた。

光と付き合っている時もファミレスやファーストフード店で遅くまで長居したっけ。

次の日もまた会えるのに離れがたくて、そろそろ帰ろうかと言いながらなかなか席を立つことが出来なかった。

若かったな。

あの頃は光と一緒にいることが私にとってのすべてだった。

だから結婚したはずなのに、一緒に暮らしていることで安心してしまったのか、仕事に打ち込むようになってからは二人の時間をあまり大事にしなかったように思う。


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