傷痕~想い出に変わるまで~
店を出てから一緒に駅まで歩いた。

門倉はなんで私のためにそこまでするんだろう?

光と私の問題なんて門倉にはまったく関係ないはずなのに。

「門倉ってさ…変わってるよね。」

「俺のどこが?」

「うーん…自分には関係ないことまで首突っ込んで世話やいて…お節介なのかな。」

門倉はまた呆れたようにため息をついた。

「あのなぁ…誰にでもこんなことするわけないだろ?俺はそこまでお人好しじゃないからな。」

「ふーん…そうなんだ。」

いやいや、じゅうぶんお人好しでしょ。

本人にはまったく自覚がないらしい。

これが門倉の生まれ持った本質なのか、もしくはバカがつくほど重症なお人好しなのか。

「まぁ、乗り掛かった舟だしな。おまえの禊が終わるの早く見届けたいし。」

そうか、早くお役御免になりたいわけね。

お人好しの門倉は私が禊を済ませて前向きにならないと、自分も安心して次の恋には踏み出せないとか、そういうことなのかも。

「そうだね、私もいい加減ヤバイかなって思い始めたし。」

「…何がヤバイ?」

「ん?こっちの話。」

まだ32歳なのにこのままじゃ光が私の最初で最後の人のまま誰にも愛されることなく枯れて行くとか、いくらなんでも言えないよ。

< 74 / 244 >

この作品をシェア

pagetop