幾年の愛を


目を覚ますといつもの天井。
いつもの光景。
やはりあれは夢だった。


最後のあの声は…いったいなんだったのか
いつも最後に聞こえてくる
あの人はいったいだれなんだ…


「はぁ…考えててもしょうがないよね。
学校の準備しないと…」


私は立ち上がり、制服に着替えていく。
荷物を詰めていると、外から
声がしてきた。


「外にお客さんよ」

「…わかりました」


遠ざかっていく足音に少しだけ
ホッと息を吐く。

ここの大人は嫌いだ。
いや、ここだけではないな。
子供以外あまり好かない。


荷物をもち、外に行くとそこにいたのは
枯捺さんだった。


「枯捺さん!」


私が呼ぶと微笑みながら私に手を振ってくれる枯捺さん…

枯捺さんは私がここに来たときに
初めて信頼していた兄のような人だ。
誰も寄りつかなかった私達は
いつも2人一緒だった。


でも、一昨年から大学に通うようなった
枯捺さんはこの施設を出て行ってしまった。
大人からしたらいいことなんだろうけど、
私はそれが嫌で嫌で仕方なかった。


 
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