幾年の愛を

声の正体



やってしまった…
絶対、冬吏さんに迷惑をかけてしまった。
落ち込んでいると視界の端に
医務室に預けた女の子がいた。

「どうしたの?」

女の子の近くに行ってみると
その手には私が貸しておいた
ハンカチが握られていた。

これを返しに来てくれたのか。

「ありがとう」

ハンカチは受け取ったものの、
私の手を離してくれない女の子。
悩んでいると、後ろにいたクロが
何かに気づいたようだ。


「クロ、行ってきて?私なら大丈夫」

クロは頷いて何かを追っていった。
女の子に向き直ると、
急に私の手を離して、どこかに行ってしまう。

「待って!」


1人で走っていってしまった女の子…
クロにはここから動くなと
言われているけど…このまま1人になんて
してちゃだめだ…
クロが行ってしまった方向を見てから
私は女の子の後を追っていった。


ついたのは公園で、いたのは男の人と
その男と手を繋いでる女の子…
もしかしたら、その子のお父さん?
なら、安心かな?

そう思っていたのも束の間、
男は女の子の髪を掴み首にナイフを
押し付けた。


「ちょっ!なにして!」


私が叫ぶと捕まっていた女の子は
目が覚めたように暴れ出した。


 
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