未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
手紙はすぐには見れなかった。

見るのが勿体無い気がするし、そもそも緊張して開くのに勇気がいるし。

見るなら部屋で一人ゆっくりと見たい。


だけど、見ないなら見ないで気になる。

部活中、ポケットに忍ばせた手紙を何回も触ってることに気付いて、生徒手帳の中に仕舞い直した。


「またブサイクになってる」


花梨は呆れながら言うと、私の頭をバシッと軽くどついた。


「ゔ……っ、ありがと…」


どつかれた頭を摩りながらお礼を言う。


軽くと言っても、何度も同じ所をどつかれてればそれなりに痛くもなるけど。

“部活中、ニヤけたら叩いてくれる?”

そう頼んだのは私だ。

お陰でどつかれる度に気を引き締めて、なんとかその日の部活を終えた。



「はあぁ〜…疲れた」


家に帰ると、制服から着替えずにベッドにダイブした。

大会が近いから練習がより一層ハードになってきて、最近は寝るのが早くなった。

今日も早く夕飯を食べてお風呂に入って寝たい。

だけどその前に、生徒手帳から手紙を取り出して、テーブルの上に置いた。


ドキドキする。

ほんの少し震える指先で、慎重に手紙を開いた。


葉山の字を見るのは何気に初めてかもしれない。

大きくて筆圧が濃く、角ばった字。
私の丸くて弱々しい字とは全く違う。


「特別……」


葉山はこれをどれぐらい時間を掛けて、どんな気待ちで書いてくれたんだろう。

少しは緊張してくれたかな。

書いてる時間は私だけのことを考えてくれてたって思ってもいい?

下駄箱に入れる時、どんな顔をして入れたの?

今は何を思ってる?


この手紙を通して、葉山を想う。


手紙って素敵。

ずっと残るものだし、字から相手の温かさや優しさを感じる。


字はその人の心を表し、手紙はその心を届ける。

最高のコミュニケーションだと思う。



< 31 / 123 >

この作品をシェア

pagetop