透き通る季節の中で
第9章 新たな地での再出発
 四月一日、木曜日、午前九時過ぎ、私は荷物を持って家を出た。

 お父さんは仕事、お母さんはパート、千春は彼氏とデート、家族の見送りはない。佐藤家にとって、私はそれだけの存在ということ。

 実家から短大の寮までは、電車を二本乗り継いで、二時間くらい掛かる。かなり距離があるので、お父さんもお母さんも千春も、私を訪ねてこないと思う。

 別に寂しいとは思わない。悲しくもなんともない。家を出られて、とっても清々しい気分。新しい生活が待っているのだから。
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