透き通る季節の中で
第10章 優しい風との出会い
 社会人になると、時間が経つのが早いというけど、まさにそのとおりだと思う。

 疲れて切って、家に帰るだけの毎日。

 仕事だけで精一杯。走る気力は出てこない。

 会社に行って働いて、家に帰って眠るだけ。

 その毎日の繰り返し。


 
 楽しみは、月に二回の練習会と食事会とマラソン大会。

 練習不足のため、タイムは落ちていく一方。

 どんなに頑張って走っても、三時間半を切れなくなってしまった。

 三時間半を切れないどころか、走る度にタイムが落ちていく。

 四時間八分。四時間十五分。四時間二十八分。いくら頑張って走っても、ずっと四時間台。

 美咲と友紀とまっちゃんは、さほどタイムが落ちることなく、三時間前後のタイムで完走している。



 とにかく一日が早い。

 一ヶ月が早い。

 一年が早い。

 仕事に追われるだけの日々が続き、あっという間に、二年が過ぎてしまった。

 こうした毎日がずっと続いて、人生が終わってしまうのかと思うと、気が滅入ってしまう。





 美咲は、幼稚園の先生として、元気に働いている様子。子供の扱いにも慣れて、同僚とも仲良くなり、充実した日々を送っているという。

 友紀は、パティシエールとして、いろんなケーキを作っているという。とにかく仕事が楽しいらしい。合コンで知り合った男性と付き合い始めたとのことで、練習会に顔を出さなくなった。

 まっちゃんは、変わらずお父さんの会社で働いている。春日さんとの交際は順調で、結婚を意識し始めたとのこと。



 美咲と友紀とまっちゃんは、仕事もプライベートも順調。着実に前へと進んでいる。

 私だけ、なんだか取り残されたような気がする。

 プライベートが充実しなければ、仕事も充実しない。

 貯金が増えても嬉しくない。
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