透き通る季節の中で
 咲樹! 咲樹!

 誰かが私の名前を呼んでいる。
 その声はどんどん大きくなっていく。
 ぼんやりとだけど、お父さんとお母さんの顔が見える。千春の顔も見える。

「私はどうしてここにいるの?」
「咲樹はね……」

 お母さんの話によると、私はジョギング中に車に轢かれてしまって、救急車で病院に搬送されたらしい。

 車に轢かれたときのことは何も覚えていない。
 救急車のサイレンの音も聞こえなかった。
 私は今まで意識を失っていたみたい……。
 
 左肩が痛くて起き上がれない。
 右膝がもの凄く痛い。
 足を曲げようとすると、もの凄い激痛が走る。
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