前世の恋人
5喫茶「Garden」に再び彼女が
その日、沙子は一人で喫茶「Garden」に来ていた。

昨日、直人とは別れた。申し訳なさそうに、でも幸せそうに、優宇と歩くところを見送った。


「ねぇマスター」

「なんだい」

「こうは考えられない?また2人は出会うために生まれ変わった、生まれ変わりを選んだのよ」



「だから思い出すし、こうやって出会うんだわ」


「でも私にはそんな記憶ないし、思い出せない。ただ大学で一緒の講義で、
隣の席の直人を好きになっただけなの」


一呼吸、おいて泣きそうな笑顔で言った。


「だから私、2人がしあわせだといいなって思っちゃったんだ。」

「だって、全く知らない同士だったのに、パズルのピースがはまるようにぴったりと似合っている。だから私が直人の恋人のピースにはなれなかったけど、友人のピースにはなれるかなって思うんだ」


「そう思うんだね」

「2人が笑ってくれると私も嬉しい。好きな人が好きな人と一緒になるって幸せだなって思うの。相手が私ではなくても、確実に好きな人は幸せでいるんだもの。相手の幸せを願うってロマンチックでしょ?それなら私も幸せだって思うの」


そういって、沙子は喫茶「Garden」を後にした。

彼女がここを訪れることはもうないだろう。





< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

海とキミのオムライス

総文字数/15,569

恋愛(純愛)30ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
何を言われても、 何をされても、 好きで好きで大好きだった恋人からの突然の別れ話 あてもなく乗った電車が着いた先でのあたたかな出逢い 「ばかやろう、死ぬつもりか!」 それが、私達の始まり。
星野くんとの朝時間

総文字数/15,554

恋愛(学園)41ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
一番に教室入りしたと思ったら、 そこには星野くんがいた。 皆が登校してくるまでの、秘密の時間。 それは私にとって、 奇跡だった。 (全7章)
ファインダー越しの君へ

総文字数/13,169

恋愛(純愛)36ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「モデルになってくれないか」 夏休み前の突然の出来事。 ありふれた日常が変わる、そんな予感がした。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop